📋 この記事でわかること
・企業物価は前年比7.2%、消費者物価は1.9%
・この差は年初の0.9ポイントから5.3ポイントまで開いた
・転嫁の波はこれから来ると見ています。実質賃金のプラスは消えるかもしれません
物価の統計には、企業が払う値段と消費者が払う値段の2つがあります。前者が企業物価指数、後者が消費者物価指数です。
企業物価は、海外ではPPI(生産者物価指数)と呼ばれるものにあたります。企業が仕入れる段階の値段なので、消費者物価より先に動く性質があります。
2026年に入ってからの推移を並べたところ、この2つにはっきりした差がついていました。

差は0.9ポイントから5.3ポイントに開いた
| 月 | 企業物価 | 消費者物価 | 差 |
|---|---|---|---|
| 1月 | +2.4% | +1.5% | 0.9pt |
| 2月 | +2.1% | +1.3% | 0.8pt |
| 3月 | +2.9% | +1.5% | 1.4pt |
| 4月 | +5.4% | +1.4% | 4.0pt |
| 5月 | +6.6% | +1.5% | 5.1pt |
| 6月 | +7.3% | +1.6% | 5.7pt |
| 7月 | +7.2% | +1.9% | 5.3pt |
年初は1ポイント足らずの差でした。それが4月を境に一気に開き、いまは5ポイント台で高止まりしています。

企業の仕入れは7%上がっているのに、店頭は2%なんですね。

この5ポイントの差が、まだ値段に乗っていない分ということになる。
出典:総務省統計局「消費者物価指数(2026年7月分・全国)」
4月に何があったのか
企業物価は3月の2.9%から4月に5.4%へ、1か月で2.5ポイント切り上がりました。きっかけは輸入コストです。
輸入物価(円ベース)は3月の8.1%から4月に21.4%へ跳ねています。円安と、中東情勢を受けた原油高が同時に効いた時期でした。輸入の急変が、ほぼ1か月で企業間の取引価格に届いたことになります。
一方、消費者物価の4月は1.4%。3月とほとんど変わりませんでした。川上から川中までは伝わったが、川下で止まっている。これが今年の物価の形です。
実質賃金はプラス。ただし前提がある
働く側の数字は悪くありません。厚生労働省の毎月勤労統計によると、7月の実質賃金は前年同月比プラス2.4%。1月から7か月連続のプラスで、今年いちばんの伸びです。
| 前年同月比 | |
|---|---|
| 名目賃金(現金給与総額) | +4.7% |
| 物価上昇分 | −2.2% |
| 実質賃金 | +2.4% |
賃上げが物価を上回っている、という意味では明るい数字です。ただ、この式を見ればわかるとおり、実質賃金のプラスは「消費者物価がまだ低い」ことに支えられています。

消費者物価のほうが上がってきたら、どうなるんですか。

名目の賃上げが4.7%のままで物価が5%になれば、実質はマイナスに戻る。いまの2.4%は、それくらいの幅なんだ。
出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査(2026年7月分結果速報)」
私の見方:転嫁の波は、これから消費者に来る
ここからは私なりの見立てです。
この差は、これから店頭に出てくると考えています。理由は3つあります。
- 企業物価の上昇が続いている。4月に5.4%へ跳ねてから、5月6.6%、6月7.3%、7月7.2%と5か月にわたって高止まりしています。一時的な跳ね返りなら、もう落ち着いているはずです
- 企業が耐えられる期間には限りがある。仕入れ値の上昇は、しばらくは利益を削って吸収できます。ただ半年、1年と続けば、体力の尽きた会社から値段に乗せていきます
- 抑え込んでいる要因が一時的なもの。ガソリンの1リットル32.5円の補助金には終了日が決まっていません。原油高も円安も、いまのところ緩む材料が見えていません
そして、すでに始まっている兆しもあります。消費者物価は2月の1.3%を底に、3月1.5%、6月1.6%、7月1.9%と上向きに転じています。
| 月 | 前年同月比 |
|---|---|
| 2026年2月 | +1.3%(今年の底) |
| 3月 | +1.5% |
| 4月 | +1.4% |
| 5月 | +1.5% |
| 6月 | +1.6% |
| 7月 | +1.9% |
7月の1.9%は、今年に入っていちばん高い数字です。企業物価が跳ねた4月から3か月、川下がようやく動き始めたようにも見えます。
もちろん、5.3ポイントの差がそのまま乗るとは考えていません。企業物価には消費者物価の約半分を占めるサービス価格が含まれていませんし、企業が最後まで吸収する分も残りますが、方向としては上がるというのが見立てです。
これは家計の目線ではダメージですが、投資の目線では逆になります。企業物価が上がっている以上、その分を価格に転嫁できなければ利益が削られ、株価も伸びにくくなるからです。家計としては転嫁してほしくない、株主としては転嫁できないと困る。同じ物価上昇が、財布とポートフォリオでは逆の意味を持ちます。
まとめ:物価が上がる前提で、家計を組んでおく
ここからは、家計の側に話を戻します。この見立てが当たると、いま2.4%ある実質賃金のプラスは消えます。名目の賃上げが4.7%のままで、消費者物価が5%近くまで上がれば、計算上はマイナスに戻るからです。
企業物価7.2%、消費者物価1.9%。この5.3ポイントは、まだ払っていない値上げの予告編
もちろん、中東情勢が落ち着いて原油が下がり、円高に振れれば、この圧力は緩みます。予想が外れることは十分にあります。
ただ、外れて困る備え方ではありません。物価が上がらなかったとしても、次の3つで損をすることはないからです。
- 固定費を先に見直す。物価が上がっても下がっても、効き続ける対策です
- 現金だけで持たない。物価が上がり続けるなら、置いたままの現金は毎年目減りします
- 賃上げを名目で見ない。「4.7%上がった」ではなく「物価を引いて何%残ったか」で見る習慣をつける



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